| 4月9日(金)の試合を振り返って... 西武 対 近鉄 (西武ドーム) |
| TEAM | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | R |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 近 鉄 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | - | 0 |
| 西 武 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1X | - | - | - | 1 |
| ■投手リレー | バーン→カラスコ 松坂 |
| ■勝ち投手 | 松坂1勝2負0S |
| ■セーブ | - |
| ■負け投手 | カラスコ1勝2負2S |
| ■ホームラン | - |
中島がサヨナラ打。松坂は2安打完封。
| 4月9日(金) 東尾修の「ひとりごと」 |
開幕翌日の3月28日、テレビ朝日の「Get Sports」でダイスケ(松坂)について、コメントした。10分を予定していた打ち合わせが、議論が白熱して2時間近くになるほど、内容は濃いものだった。しかし、限られた放送時間の枠では、そのすべてを皆さんに伝えられる筈もなく、“よい”か“悪い”か、のどちらかといえば、“悪い”と言わざるを得ない、というスタンスから厳しいコメントに至った。オレが言いたいことはおそらく伝わっていないだろう、その不安が的中し、翌日ファンから苦情のメールが届いた。このサイトを開設した理由、それはオレの意見を100%誤解なく皆さんに届けるためだった。という訳で、少し遅くなってしまったけれど、ダイスケについてのコメントの真意を今日のダイスケのピッチングの話と合わせてしたいと思う。
まず、テレビでのコメントについてだが、“フォークを使うと試合の中盤で握力が落ちてしまう”、“肩肘の負担を減らすためにフォークを捨て、チェンジアップ中心にしている”というダイスケのインタビューを見た第一声は、「そんなことではダイスケはダメになる」だった。今の苦しい状況を乗り切るためだけの窮余の一策として考えているのであれば構わない。しかし、そうでないとするならば、このままではダイスケは30歳を過ぎて、並のピッチャーで終わりかねない。ここで一つ忘れてならないのは、オレのコメントは“編集後のインタビューのVTR”を見て感じたことであって、あくまでもダイスケの真意は分からないままコメントをしているということ。打ち合わせの段階で再三オレは“ダイスケと話してみないとも何とも言いきれないけどね”と補足していたが、放送ではそれは伝えられるはずもない。
ひとまず、インタビューを見て感じたことを素直に述べさせてもらうよ。まず、なぜダイスケがフォークを頑なに拒むのかがわからない。オレが監督辞めるまでは、チェンジアップなんてまったく放ってなかったし、フォークを習得する準備が着々と進んでいた。頭がいいダイスケだからこそ、フォークの重要性がわかっているって思っていただけに、ここに来てフォークを捨てチェンジアップを頼りきる様になったのが理解できなかった。通常、フォークを完璧にマスターするまで3〜5年かかるが、その過程で手っ取り早く身につくチェンジアップを取り入れ、それで満足してしまったのではないだろうか。“試合の中盤で握力が落ちる”、オレから言わせて見れば単なるトレーニング不足に過ぎない。握力が落ちるからといって避けていたら、ますますフォークに必要とされる筋肉が落ちていき、先々レベルアップしようにもできなくなる可能性だってある。ただし、先述したように“今を乗り切るためだけの策”ならば、問題ないし、むしろ考え方はいい、と褒めているだろう。
ダイスケが活躍すると、チームがリーグ優勝を逃す。このことにダイスケ自身も気付いている。思い描いていたような成長ができず、自分の理想と現実のギャップに苦しんでいるつらい時期にいるのかも知れない。入団当初、世間はダイスケにスピードを求めた。監督の立場のオレまでもが一緒になってあおってしまってはダメになると、“スピードだけでは勝てない。勝つためのピッチングをできるようになれ!”そういい続けた。しかし、故障し不調に陥ると今度は“勝ち星”を世間は求めるようになってきた。そこで今度は“スピードをなくしたらダメだ!”と言って聞かせた。他のピッチャーとは違い、世間が求めるもの、本人の理想、それぞれのレベルが高いだけに、すべてがあいつのピッチングに影響してくる。だからこそ、その時の状況に応じて、的確なアドバイスをしてやらなくてはダメなのだ。
そう思うならば、なぜアドバイスしてやらないのか?と言われるかも知れないが、それには理由がある。今回のように本人がいろいろ悩んで考えた結果“こうだ!”といってる場合、監督時代もそうだったが、頭ごなしにああしろ、こうしろ、とは絶対にいわないようにしている、というのがある。オツ(西口)やタカシ(石井貴)に対してもそうだったが、ピッチャーの先輩として選択肢の一つを提示してやり、本人が納得した上で取り組み、それでダメだと感じたら、それ以上は強要することはしなかった。多くの選手を見てきたからこそ助言できることはたくさんあるが、本人の意思は尊重すべきだと思うからね。もう一つは、今のオレはあくまでも外部の人間であるということ。こういうと、突き放した言い方に聞こえるかもしれないが、誤解しないで欲しい。現場のコーチを差し置いてオレがああでもない、こうでもないとダイスケに言う訳にはいかない、という意味だ。といっても、見てみぬ振りをする訳ではなく、気付けばアドバイスとまではいかなくとも「こうじゃないのか?」と声をかけることはしている。
開幕から2試合、カウントを取りにいく球、決め球にチェンジアップをフルに使ったあげく、コントロールが定まらず、完投しながら負けた。そして迎えた今日の試合。立ち上がりを五分の力で行くのか、アクセルを全開に踏み込んで行くのか、どういうピッチングスタイルで行くのか、期待と不安を抱きつつ、試合を見させてもらったのだが、結果的には見ていたオレも、おそらくダイスケ自身もかなり満足いく試合となった。
まずはよかった点。1つめは、チェンジアップの割合だ。過去2試合とは違い、チェンジアップでカウントを取りにいったり、決め球に使ったり、という頼りきった投球ではなかったということ。北海道でダイスケと軽く話をした成果が出た気がした。2つめは、右足の親指がしっかりしていたという点。入団当初からいい続けてきたことだけれど、どうしてもスピードを追い続けていると上体が逃げてしまい、右足の付け根が浮いたり、浮かなかったりと、上手く体を安定して支えることができずコントロールが乱れていた。しかし、今日は右足の付け根が体をしっかり受け止めていた。全体のコントロールがよかった原因はここにあったといっても過言ではない。3つめは、自分のボールに謙虚であったこと。1死3塁でPL出身の同級生(同年代)大西をむかえた場面。以前のあいつならば、自分のプライドや勝ちを優先したピッチングをして打たれていただろう。しかし今日は、2ストライクまで追い込んだ後、クイックで投げタイミングをずらし、高めのまっすぐで三振を奪う、“チームの勝利”を優先した投球に徹する事が出来ていた。ノリ(大阪近鉄・中村)に対しての四球もそうだ。監督時代、イチローとの対決や、自分よりレベルが下ながら同級生というだけで真っ向勝負をするダイスケに「(そういうことは)チームの勝負が決まった後からやれ!」と強く言ってたが、頭と体がついていかず、ことごとく打たれていた。何年経っても、その状況が続いていただけに半ば諦めていが、今日その場面を見た時には正直驚かされた。
次に注意すべき点をいくつかあげよう。まず1つ目。テレビのインタビューでダイスケ自身が体のひねりについて話をしていたけれど、本人の理想とするフォームに近づけたいのならば、今よりも左足を気持ちサード寄りに向けた方がいい。今のままではバッターに対し正対し過ぎていて、足をあげるのにも遠回りになり、その反動が大きすぎるために体が開きやすくなっている。ほんの少し、サード寄りに向けるだけで、左足をそのまま真上に上げればよくなるのだから、自然と体も閉まってくるという訳だ。次に、腕の振りについて。調子がいい時、振りぬいた腕は左の脇を通り、背中に手があたって音がするもの。以前のダイスケは、腕の振りが早いわけではないキャッチボールの時ですら、手が背中にあたるほどだったのだが、ここの所、手があたるような場面を見たことがない。何年もの経験を経て、コントロールとスピードのバランスをとろうとしている姿勢はいいが、楽しすぎてはダメ!時折、腕が背中に勢いよく当たるぐらいに思いっきり振り切ることもしておかないと、いざスピードを求めて投げようとしてもできなくなってしまうからね。最後に、セットで投げた際、フィニッシュが左足にのらず、右に流れすぎであること。左のヒザに乗り切ってから右に流れるぶんについてはいいが、今は右に流れるだけなのが多すぎる。
今日の試合は、ダイスケにとってかなり満足のいく試合だったのは間違いないだろう。しかし、今日と同じピッチングをしたからといって100%勝てる訳ではない。今日は、立ち上がりからエンジン全開で行けたことで腕のキレがよく、まっすぐのコントロールが冴えた。序盤に自分のリズムを上手く掴み、中盤に入っても7分の力ながらキレのある球を投げ、さらに終盤に再びエンジン全開で投げることもできた。もし状態が悪かったら今日のように立ち上がりから100%の力で投げることは難しくなる。その時に忘れてはならないのは、ボールを離す時の指のキレ、だ。腕の振りが悪いと、ボールを放す瞬間の指も緩んでしまい、チェンジアップが高めに浮いたり、シュート回転したりする。過去の登板でコントロールに苦しんだのも、“離す瞬間そうっと放る”投球が関係しているのではないだろうか。指先が不器用なダイスケだけれども、離す瞬間に指先に力を入れ、きる感覚を忘れずにいれば、たとえ5分や6分の力でも思うような投球ができるはずだ。
現役当時、目を閉じると常に自分のいい時のフォームが自然と見えた。状態が悪くなれば、目を閉じ「ここが悪いんだ」「あそこがダメなんだ」と自分で修正することもできたが、まだ今のダイスケは自分自身を知り尽くしていないだけにそれができない。完璧な立ち上がり、完璧な投球が何であるか、それは現役が終わるまで100%の答えは出ることはない。だからこそ、思い込みや勘違いで左右されるのではなく、自分を知り尽くし状況に応じたピッチングができるようになってもらいたい。
長々と書いてしまったが最後にもう一言だけダイスケへのメッセージを。「いい点、悪い点、数多くの注文をつけたけれど、頭の片隅においてもらえればそれでいいよ!今日一日よく我慢したね!勝ててよかったな。本当におめでとう!」。


