| 2月6日(金) 東尾修の「ひとりごと」 |
昨日(5日)の最終便でようやく沖縄に入ったよ。いつも滞在地に入るとどこの球団にどの順番で回ろうかって悩むんだけど、とりあえず今日はベイスターズのキャンプに足を運んできた。というのも、「大魔神」が来る前に行っておかないと、報道陣が多くなって落ち着いて見ることができないからね。
今回、「大魔神」が日本球界に復帰するにあたって、抑えを求める各球団が獲得に乗り出してきていたわけだけど、結局は古巣横浜が面子をかけ、10億という破格の値段で獲得に成功した。“人情”や“話題性”の観点から言えば、古巣の横浜に戻る事はとてもいいことだったと言えるだろう。シーズンに入ってからのキヨ(巨人・清原)との対決にしたって話題になるだろうし、オレ自身楽しみに思ってる。ただ、それはあくまでも客観的、楽観的観点に過ぎない。現場やGMレベルの現実的な話となると、10億の補強が、将来の補強に影響を与えるのではないか、って気がしてならないんだ。つまり「今回佐々木獲得に10億かかったから、しばらく補強を控えましょう」になってしまうのではないか、ということ。
オレが監督としてリーグ優勝を果たした時、横浜は強いチームだった。ところが、たった数年でBクラスに定着してしまうほどのレベルになってしまった。そのため、「いい選手がいない」「力がない」と言った見かたをされがちだが、実際はそうでもない。昨年あたりから若い選手、たとえば古木、村田、内川といった活きのいい選手が揃い始めているし、ピッチャーにしたって一時期に比べれば、期待できないわけではない。となると、今の弱いチームの立場を利用して、彼らに1軍で経験をつむ場を与えればその才能を発揮してくる可能性は大。さらにそこで新たな戦力を上手く補強していけば、チーム全体のレベルアップに繋がるはずなんだ。だからこそ、さっき言ったように、佐々木の獲得がそれに歯止めを掛けてしまうような事態を恐れているんだよ。
補強、という面で寂しく感じたことがもう1つ。高校生が意中の球団ではない球団から指名された場合、そのままプロに進む選手と、大学・社会人に進む選手の2パターンがあるのは皆さんも知ってのとおりなんだが、高校生の段階である程度能力を持った選手が、希望する球団へ入りたいことだけを理由に遠回りすることが、果たして本人にとっていいのか、球界にとっていいのか、少し疑問に感じてしまったんだ。というのも、今回監督時代にスカウトと共に「いい選手だ」と評価が高かった森大輔投手を見させてもらったのだけれど、あの頃の勢い、良さっていうものが影を潜めてしまっていてね。「これでよかったんだろうか」って、ふと寂しく思ってしまったんだ。高校生の段階で力が備わってない選手は大学・社会人を通って成長することがあるけれど、力のある選手の場合、その力を維持することは難しいし、ましてや、それだけの能力を持って大学・社会人の道へ進むと、他の選手とのレベルの差から油断しがちになり、手を抜きやすくなる。江川(元巨人投手)だって、指名されたままプロの世界に入っていたら、名球会入りするだけの活躍をしていただろう。遠回りしながらもあれだけの成績を残し、活躍できたのは、それだけの能力を持っていたからであって、誰しも同じ道を歩めるとは限らない。
遠回りするリスクを、意中の球団が「将来必ず取ります」という暗黙の了解で保障しカバーしていることが事態を余計に悪くしてしまっている気もする。数年後、いざ獲得っていう時にたとえ能力が落ちていたとしても取らざるを得ないのだから、球団にとっても負担なのは間違いないだろうし、それを続けていれば強くなれるチームだって強くなれないのは当然だ。あくまでも今回は一例としてあげただけだけど、これはどこの球団にもおきている事態なんだ。ダイスケ(西武・松坂)みたいに、最初は希望球団を持っていても、それにも勝って“プロの選手に!”っていう気持ちが強ければ、そのままプロ入りするんだけどね。
どんな形で入って来たにせよ、この時期はそういった若い選手を期待のまなざしで見る時期なだけに、とりあえず良し悪しは言うまいって思ってるんだ。現場経験のある人間がこの時期にスポーツ紙の評論で“ダメ”と烙印を押してしまうことは絶対にしてはならないことだって思ってるからね。既にキャンプ3日目あたりでそういう記事を目にしてショックだったよ。その選手のファン、家族、そして本人、そういう人達がそれを読んだらどんな気持ちになるのか。そこまで考えないとね。まだまだキャンプは始まったばかり、今は期待だけを胸にキャンプ見学をしていきたいよ。


