| 1月19日(土)東尾修の“気になる男たち” |
◆連載6:清原と桑田(下)
ひと足早く復活した清原に対して、桑田はまだ試行錯誤を繰り返している。4月で34歳。今までつくってきた財産でこれからやっていかなきゃいけないという時期に、まだ“これ”というフォームができてない。今ごろ何やってんだ。
運動生理学から栄養学まで勉強している理論家。松坂に「桑田の話を聞いてみろ」と勧めたこともある。その手本となるべき投手がこの3年間は、8、5,4勝…。いろんなフォームで投げてきたけど、結果が出せない。“講釈太り”じゃないかと言いたくなる。
今の桑田に欠けているもの。それは“体のねじり”だ。右投手の場合は、左足を上げ、体重移動して打者に向かっていくときに左肩を中に少し入れる。この“ねじり”によって球離れを遅くし、打者に球の出どころを見づらくするんだ。
左肩を入れると、投げるとき逆に早く開くと考える人がいる。桑田もその一人かもしれない。恵まれた体で150キロの速球を投げ、球威で勝負できる投手ならそれでいい。でも、私(177cm)や桑田(174cm)のようにプロとしては小さく、しかも140キロ出るかどうかの投手は、それでは勝てない。左肩を入れて、なおかつ開かない投げ方が不可欠。左肩をいれ、力を内側に絞って、出ていく−。柔軟性のある強い下半身があればできる。桑田なら意識すればできるはずだ。
桑田は95年に右ひじのじん帯を断裂して手術を受けている。そのひじの負担を考えて“ねじり”が使えないのかもしれないけど、そうならもうユニホームを脱ぐことを考えた方がいい。
力が衰えてくると、首脳陣の評価と自己評価のギャップが生まれる。私はそのギャップを感じて引退を決意した。88年、中日との日本シリーズ第1戦。4−1でリードしていた8回、先発の渡辺久信が無死1,2塁のピンチをつくり、打席に彦野を迎えたところで私の出番がきた。
私は最後まで投げ切るつもりだった。それが自己評価だった。ところが、森監督(現横浜)からは「このバッターだけ抑えてくれ」と言われた。これが首脳陣の評価だ。この瞬間、引退を決めた。でも、ピンチは抑えなきゃいけない。彦野は初球、シュートで計算通りの三ゴロ併殺打。続く立浪は3球三振。たった4球でピンチを切り抜けた。
桑田もすでにそのギャップを感じているはずだ。今年、ギャップを縮めることができるか、それとも…。それは“体のねじり”がカギを握っている。
(スポーツニッポン02年1月13日より)

