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1月14日(月)東尾修の“気になる男たち”

◆連載1:仙さんと田淵さん(上)〜ズバぬけた政治力の闘将

星野仙一さんが阪神の監督になって、わが敬愛する田淵孝一さんをコーチとして引き連れていく。最初に聞いたときは「おっさん、監督はあんたじゃないのかい?」と田淵さんに言いたかった。何たってかつて甲子園を沸かせた大スター。親友の下のコーチで満足できるのかと思ったのだ。

でも、暮れに電話したとき、その弾む声を聞いて、言うのをやめた。仙さんと一緒に縦じまのユニホームを着られることを心底喜んでいるのだ。私は2人より4歳年下だけど1968年のドラフト同期生。田淵さんとは西武で同じ釜のめしを食ったし、そんな関係で広島の山本浩二さんを加えて毎年ゴルフをするなど親しくさせてもらっている。

その付き合いの中で2人を見ると、監督はやっぱり仙さんかなと思う。トップに求められる政治力が抜きん出ているもの。就任前後の動きを見てもわかる。名古屋のファンにけじめをつけ、大阪のファンには「来てくれ」というムードをつくる。就任が決まれば、明大の後輩で2軍野手総合コーチに決まっていた平田を専属広報に、そしてマスコミなど各方面へのあいさつ回りの合間に、残留か阪神か迷っていた片岡の背中を押し、渡米中の田口にもラブコール。その精力的な動き、実行力には恐れ入る。

現役時代は巨人戦で闘志をむき出しにして「燃える男」のイメージを売り、引退後はNHKの解説者として“仙ちゃんスマイル”をふりまいて全国区の人気をゲット。若く40歳にして中日の監督になり「闘将」のキャラクターをすっかりつくり上げた。名古屋という地域性もあったんだろうけど、あの強烈な個性はうらやましく思ったよ。

監督をやってたときにはオープン戦で会うたびにトレード話。95年に村田⇔清水、前原の交換トレードを成立させた。こっちは清水と酒井(現ロッテ)をくれって言ったはずなのに、決まったときはアレって感じ。駆け引きがうまいというか、策士というか…。今回も積極的にトレードを仕掛けるのは間違いないね。

すでに片岡、去年オリックスで38本塁打を放ったアリアスを獲得。これに田口が加われば、打線はガラリと変わる。3人とも監督就任が決まる前から動いていた話。ツキを感じるね。さらに、仙さんのことだから左の大砲とストッパーの新外国人も獲りにいくはず。フォローの風に乗ってトレード、新外国人獲得に成功すればチームはさらに変わってくるよ。

(スポーツニッポン02年1月8日より)

◆連載2:仙さんと田淵さん(下)〜勝利へ…リーダー育成を

年明けの今の時期、12球団の選手にチーム目標を聞けば誰だって「優勝」と答える。弱いチームの選手は口先だけの「優勝」で、本音は「Aクラスに入れりゃ御の字」だったりするんだけど、てっぺん目指して優勝争いに絡んだ結果のAクラスじゃないと価値はないんだよね。

阪神は4年連続最下位。でも、ノムさん(野村克也前監督)の3年間の指導で基礎はできている。仙さんは積極的な補強策を展開して、いきなり優勝を狙っている。ただ、選手がどれだけその気になるか。その点で不安になるのが、投手にしても野手にしても生え抜きのリーダーがいないってことだ。

西武で初めて優勝したときのことを思い出す。今から20年前の1982年。新任の広岡達朗監督とぶつかりながら、前期優勝、そして日本ハムとのプレーオフを制した。その2年前には惜しいところで優勝を逃し、田淵さんと2人で紅茶をすすりながら「わしら、一生優勝できんのかなあ」と嘆きあった。とにかく優勝したい。「自分たちのために優勝しよう」。首脳陣に対する反発で選手が団結した結果の優勝だった。

日本シリーズも4勝2敗で中日を倒して日本一。その瞬間、真っ先に抱き合ったのが田淵さんだった。名古屋から東京に戻ると田淵さんが音頭を取って全員で銀座に直行。文字通り美酒に酔った。去年の近鉄には中村がいたように、優勝するチームには心の底から優勝したいと思っているリーダーが存在するものだ。

残念ながら今の阪神にはそのような柱がいない。チーフ打撃コーチの田淵さんには、打線の核となるべき生え抜きのリーダー育成が求められる。特に長距離砲。候補には去年13本塁打を放った浜中がいるけど、チームとして彼をどう育てていくのか。

外野には桧山、赤星がいて、オリックスからFA宣言した田口を獲りにいっている。獲得できれば広い甲子園で田口の守備は大きな戦力になる。さらに左の大砲の新外国人選手も獲りにいくはずだ。補強がすべてうまくいったら、浜中の守るところがあるんだろうかと心配になってくる。

野手を育てるには、能力を認めてひとつのポジションを与えてしまうか、競争の中で奪い取らせるかのどっちかだ。まず勝利を目指す仙さんと、育成を義務づけられている田淵さん。キャンプ、オープン戦を通じてどういう方針を打ち出すか。そカジ 取りに注目したい。

(スポーツニッポン02年1月9日より)

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