
各自、席に着き、まずはビールで乾杯!
東尾:ようこそいらっしゃいました。それでは、今日は楽しんでください。乾杯!
乾杯の発声と共にオフミーティングスタートの筈が、まずは東尾から渡辺二軍監督への鋭い質問攻めがはじまる。今のピッチャー陣について、チーム状況について…延々と続く質問攻めは、まさにプロの現場の臨場感あふれる話し合い。両者の真剣な話し合いに参加者も思わず引き込まれてしまいます。その内容に至っては「あ、これは全部オフレコでね」と両者。そのため、残念ながらここではご紹介することができません。
しかし、いずれも西武を思うからこそのふたりの厳しい意見とあって、どれも納得して聞き入ってしまうことばかりでした。質問攻めがひと段落つき、ようやく納得いった様子の東尾は「じゃ、今度はゆっくり食事でもしながら、皆さんの質問に答えていこうか…」と満面の笑み。そして、 事前に集めた参加者の皆さんからの質問にひとつずつ答えて行くのですが…。
東尾:お、ナベ、質問にはお前も答えろ、いいな!
渡辺:え、僕もですか? 僕はいいでしょー!(苦笑)
東尾:うるさいっ。お前も答えるんだよっ!
Q.もし監督やコーチ就任要請がきたらどうしますか?
東尾:例えばどこのチームの話かな?どこでも?う〜ん…ジャイアンツは生え抜きの人しかならないし、そういった意味ではチームは限られてくるけれど、とりあえず監督業は実際やってみて本当に疲れたので、やるとしたらコーチとかヘッドとか…。一番やりたいのは専門であるピッチャー陣のことだけ教えることをやりたいね。
趣味といったら語弊があるかも知れないけれど、自分の好きな分野だけ専念してできたら、これほど嬉しいことはないかな。まぁ、監督以下人事に関してはもうこの時期にはほとんど決まってるものだから、何ともいえないけど、西武の一・二軍の投手陣統括コーチっていうのは是非ともやってみたいね。
監督業…という以前に、バッターっていうのは性格悪いのが多くてね(笑)。ピッチャー出身者にはバッターを理解できないんだよ。特に、ジャイアンツの監督なんかはそういった意味では大変だと思うよ。日本人で実績のある選手が多いと、扱うのにひと苦労するからね。その点、西武は若い選手が多いからいいけど、それでもやっぱり大変だったんで、自分が監督の時には必ず野手出身で打撃を一括して任せられるひとをヘッドにおかせてもらったんだよ。
渡辺:去年まではピッチャーだけをみてられたけれど、今年から監督という立場になってピッチャーだけを見るっていう訳にはいかなくなったのが一番つらいですね。
状態の悪いピッチャーがブルペンで練習してるって聞くと、付きっ切りで見たいって思うけれど、そうもいかず、バッティング練習を見るんだけど打撃のことは分からないし…。とはいえ、打撃コーチに任せっきりっていうのも、一軍のヘッドコーチから“今状態のいい野手は誰だ?”って自分のところに連絡が来る以上、全選手について把握していないとダメだし。監督業が大変で、野手に関して分からないっていう東尾さんの気持ちはよく分かりますよ。
Q.松坂投手を獲得する際、200勝のボールをあげることは、ドラフト会場でクジを引いた時から考えたのでしょうか?
東尾:ドラフト前日に、オーナー(堤氏)から“今日だけは悪さはせず、体を清めて明日行って来い!”って電話がかかってきてね(笑)オレにしては珍しく、朝から水風呂入ったりして、できる限り体を清めてから会場に行ったんだ。ダイスケ獲得に4球団乗り出すといわれてたところ、結局クジを引いたのが3球団で、日本ハム、西武、横浜の順だったんだけど、その年、日本シリーズで勝ってたら最後に引くところを負けたんで、二番目にいってダイスケを引き当てた。権藤さんとは仲がいいんで、シリーズ中にもドラフトの話をよくしてて、日本シリーズに勝つ方(=最後にクジを引く=松坂獲得のチャンスは低い)がいいか、大輔を獲れる方がいいか、なんて話をよくしてたんだ(笑)
日本ハムの上田さんが外した時には、さすがのオレも“勝負師と言われてる以上、何としてでも獲らねば!”ってプレッシャーはあったよ。まあ運も味方して権利を得た訳だけど、当時ダイスケは横浜にしか行かないって言っててね。クジを引き当てたら当てたで今度は“何とか入団してもらわないと!”ってプレッシャー…本当大変だったよ(苦笑)
実は、マスコミでダイスケと初交渉と発表された時には、既に一度ダイスケと彼の両親に会った後でね。初めて会うって時にはまだ200勝のボールを渡してどうの、何てことはまったく考えてなかったんだ。というのも…ちょとカッコいいこと言っていいかな。自分のうちには記念品だとかトロフィーだとか何一つ飾ってないんだよ。何故なら、そういうものは自分の心の中に飾っておくものだからね(得意そうに微笑む東尾)。 ま、そんな訳で子供の部屋で唯一あった200勝のボールがたまたま目に留まったんで、“何かの役に立つかな”って思って持ち出したってだけなんだ。
当時、西武王国と言われただけに、何としてでも獲らなきゃっていう思いもあったから、心のどこかで“最終手段でこのボールを…”と無意識に思っていたのかも知れないけどね。実際、ダイスケとダイスケの両親に会った時には、まず両親を安心させることから入ったよ。うちに預けてくれれば、彼を200勝、日本シリーズ第1戦先発を目標とし、それを成し遂げるピッチャーへと育て上げます、ってね。監督としてというよりは一野球人として、一投手として話したって感じかな。
最後にダイスケにボールを差し出した時には、これにどう反応するか、突き返されたら入団の可能性は低いかも知れない…そんな不安もよぎったけれど、ダイスケはボールの重みに一瞬迷いを見せたものの、スッと受け取って持って帰ったんだ。この瞬間、「間違いなく入団してくれる」って確信したよ。あいつの中では横浜しか行かないっていう気持ちよりも、早くプロになりたいって思いが強いっていうのが感じ取れてたしね。
渡辺:東尾さんを持ち上げるつもりはまったくないんだけれど、ダイスケが入団したのは東尾さんだったからっていうのは間違いなくあると思うよ。野手出身だったり、実績がない投手出身だったりしたら、来てなかったと思うから 。
東尾:ナベ、何ゴマすってるんだよ(笑)
渡辺:いや、本当ですよ。トンビさんじゃなかったら来てなかったですよ、絶対!
Q.若手選手の足りないところ、一軍でも通用するポイントは何でしょうか?
東尾:有望な選手、期待されている選手、そういう選手はチャンスをもらって使われる。それ以外の選手も何だかんだいっても、そこそこの選手にはなれるものなんだ。プロに入っている以上、誰しも育つ能力はそれなりにあるからね。
ただ、あとは自分がどうものにするかだけなんだよ。+αの部分はコーチ陣ではどうしようもないからね。チャンスをもらっても掴みきれなかったり、一歩進んでも二歩後退している間はダメ…ま、これまで本当の意味で毎年確実に成長を見せたっていうのは、カズオ(現メッツ)ぐらいかな。本人の性格もあるけれど、若い選手にはミスをして叩かれようが何しようが、跳ね除けるぐらいの逞しさを持ち合わせていてもらたいね。
渡辺:例えば、ファームでカウント0−2になった後、素直にストライクをとりに来た球をいくら打てたとしても仕方がないんですよ。なぜなら、一軍に行ったら同じ場面で、よりハードなストライクや、イヤらしいスライダーが来ますからね。所詮二軍は二軍で、いくら下で打てても一軍で打てるとは限らない。
ピッチャーにしても、ファームクラスはこの球、勝負球!っていう球で決められず、甘い球になることが多い。一軍ではその1球が致命傷になる。けれど、相手がファームのバッターだと、バッターはバッターで1発で決めなくてはいけないところを決められないから、ファールで粘って次の球、またその次の球…といった具合になる。その中で、運がよければ抑えられるし、運がよければ打てるといった感じなる。1球で決める!これができるかどうかが、一軍と二軍の違いだと思います。
Q.二軍の選手が一軍に登録されるタイミングは、どう決まるのでしょうか?
東尾:おっ、これは現役の監督に先に答えてもらおうか(笑)
渡辺:タイミングって意味合いにもよるんだけど…えっと、大体連絡が入ってくるのは一軍の試合が終わってすぐだね。その試合でダメだった選手がいると“今調子いい選手は誰だ?”って連絡が来るんだよ。ファームの試合はデーゲームなんで大体朝の6時起きの生活をしてて、上はナイターだから、電話がかかってくるのが、23時過ぎ…それが本当に辛い(苦笑)毎晩携帯を枕元に置いて寝ててね。話した後はしばらく寝付けないし、大変だよ(笑)
東尾:入れ替える判断基準という意味でいうならば、いくつかあって1つは調子が悪い選手を、調子のいい選手と交換するケース、2つ目は調子の良し悪し関係なく、ケガ、その他で不足したポジションを補うために昇格させるケース。稀ではあるけど、それ以外では、監督が個人的に期待をかけてる選手がいたりして、調子が悪くても“上げる”って一言いって、二軍監督が断れないケース(笑) 二軍にいる選手の状態がどんなによくても、一軍の状態がよければ入れ替えはないからね。その証拠に、ソフトバンクやロッテの入れ替えは少ないだろう?
渡辺:現役の時に富山で先発した時、登板直後にある監督にファーム落ちを言われたことがあって、右も左も分からず富山から一人で寂しく帰ったって経験があるんだよなあ…あえて監督は誰とは言いませんけど(笑)
東尾:ん?…って、もしかしてオレか?(笑)実績ある選手に二軍落ちを命じるのは辛いよ。ただ、ピッチャーに対してはその後フォローもできるし、説得する自信もあるから、どれだけ実績ある選手だったとしても言えたけどね。ナベに関しては、ファーム落ちだけでなく“クビっ!”ってのも言ったしな(笑)
Q.西武ライオンズ投手王国再建のキーポイントは何ですか?
東尾:これもお前から答えて。オレが後からフォローするから。
渡辺:またですか〜!!(苦笑)えっと…まずは、今、二軍にいる投手陣、大体20人くらいだと思うんだけど、そのうち半分をクビにして、高校生の球の速い子を10人集める。コントロールとかまったくいらないから、とにかく球の速い子。っていっても、これはあくまでも究極な案であり、来年の再建じゃなく、数年後を見据えた話しとして聞いてもらいたいんだけど…。
東尾:確かにそう。プラスそれに加えるなら、その高校生を集めるためのいいスカウトが必要ってことかな。20人中10人クビって聞くと驚くかも知れないけれど、どのチームもファームにいる投手陣のほとんどが二軍の試合を成立させるためだけにいるといっても過言ではないんだ。
10人とった中で2〜3人ものになればいい、そういう世界なんだよプロは。だからこそ、いい高校生を探し出してくるスカウトは重要なんだ。甲子園で活躍したり、注目を浴びた選手にしたって、その選手の同年代の中では一番いい選手かも知れないが、じゃプロの中では?って話にるからね。高校時代には差があった選手だって、ヘタするとプロ入り後に力が逆転するケースが多々あるし…。
渡辺:もう1つ、これも自分の考えに過ぎないんですけど、強肩のキャッチャーを作ることが必要かなと。今って、アマチュアのいいキャッチャーがいないらしいんですよ。っていうのも、自分達が子供の頃ってスポーツといえば野球しかなかったのが、今は色々な選択肢がある。そのたくさんある選択肢の中の1つである野球を選んだ限られた子の中で運動神経のいい子はピッチャーをやって、太った子や体格のいい子はキャッチャーをやるって感じになってるんですよね。
野球しかなかった頃は人が多かった分、身体能力の高い子もキャッチャーをやってたんで、力あるキャッチャーが育ってたんですけど、今はそうじゃなくて…。なので、いいキャッチャーを作る案としては、身長174cm前後で140km以上投げるピッチャーを引っ張ってきてキャッチャーとして育てるべきなんじゃないかと。
いいキャッチャーになれたら、いいピッチャーにもなれますからね。ちなみに174cm、140km…っていうピッチャーは、プロのピッチャーとしてはまず声がかからないんですよ。だからこそ、あえてキャッチャーで引っ張って来てはどうかなって。
東尾:監督時代によく“ピッチャーで足が速くて肩がいいのを毎年1人探して来い!”って命令してたよ。それは全部プロに入って野手に転向させるっていうのを前提で探させてたんだけど、カズオや中島がまさにそのパターンだよ。
ただ、こういう命令を出さない限り中々スカウトも動けないってのいうのが実情なんだ。というのも、どのスカウトも責任を被りたくないからね。自分がドラフトの上位指名に推薦した選手がプロに入って育たなかった場合、責任が全部自分にかかってくる。そうなると、なかなか無名な選手を探し出してきて…っていうのは難しいよ。とはいえ、パ・リーグは比較的育ちやすい環境にあるとは思うけどね。
渡辺:あと、ボールも確かに大切ですけど、こっち(ハート)の強いピッチャーを探して来て欲しいですね。当てたらどうしよう、とか当てた後にイプスになったりとか多いですから…。
Q.全盛期のON(王・長嶋)と対決、またはONをバックに投げたかったと思ったことはありませんか?
東尾:今のように交流戦があったり、メジャーに行ったりっていう時代ではなかったから、真剣勝負とかバックにとか、それこそメジャーにとかっていう気持ちはこれっぽっちもなかったかな。真剣勝負っていう勝負ではないけれど、18歳の時にオープン戦で初めて長嶋さんと対戦した時、テレビで見てたあの長嶋さんが自分の投げたボールを打ってくるってことにはさすがに感激したけどね。
日本一の与死球を誇るオレでも、王さんにはぶつけることができても長嶋さんには無理だなあ(苦笑)存在が別格っていうか…。王さんは人間性や社会人としてとても尊敬してるよ。毎年、名球会でハワイに一緒に行ってるんだけど、王さんは必ず年賀状を持っていっては直筆の一言コメントを書き添えているんだよ。その数は何百枚どころじゃない筈なんだけど、それでもそれを欠かさないからね。本当にすごい人だよ。
え?交流戦をやってたら胸元を攻めてたかって?う〜ん、どうだろうね。ONクラスに対して投げれたかは定かじゃないけれど、たぶん行ってただろうね。オレからタイムリー打ったり、ホームラン打ったりした選手は、次の打席で皆腰が引けていたんだよ。“さっき打ったから、この打席は絶対頭に狙われる!”って危険を感じてたみたいでね(笑)そういう風に“打ったら次100%仕返しされる!”っていう考えを浸透させると強いから、たとえONであっても必要とあれば攻めていたんじゃないかな。
渡辺:東尾さんは自分をよく知ってたんですよね。どんなに速くても137,8kmしか投げれなかったから、それをカバーする術を考え出したっていうか…。その点、僕はヘタに150km投げれちゃったから、いけなかったんだろうなぁ(笑)
東尾:バカ言え、俺だって若い頃は137,8kmより早く投げれてたぞ!
渡辺:えぇ〜、本当ですかぁ?入団した当時からその位だって聞きましたけど(笑)でも、今のピッチャーも自分をよく知らないとダメですよね。バッターは性能のいいバッティングマシーンができてきているんで、打撃のレベルがどんどん上がってますけど、ピッチャーはそうはいかず、昔ながらの練習で力を上げようとしてるんでレベルは上がらない。レベルの上がった打撃に対抗するには胸元に投げなきゃいけないって分かってるんですけど、それが投げられないんですよね。
僕も当てようと思って本当に当てることができたのは1人だけですからね。“あ、悪いな”っていう気持ちが投げる瞬間、ボールが指を離れる瞬間によぎって逃げちゃうんですよね。だからこそ、ピッチャーはバッターと仲良くしちゃダメだし、逆にバッターはピッチャーと仲良くしておいた方がいい(笑)
東尾:オレだって当てるとなったら自分が思っている所の30cm後ろめがけて投げなければ絶対当たらなかったしね。当てこそしないにせよ、胸元をきわどく攻め込めるピッチャーが今はいないし、たとえできても一度だけ。続けて二度、三度ができないのが多い。二度、三度いかないのなら最初からいくな!って思わず言ってやりたくなるよ。
渡辺:ほら、僕の場合は根が優しいから…(笑)
東尾:だから30歳そこそこで衰えてたんだよ(笑)
※※文中の発言内容と画像とは、必ずしも一致しません。

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